ワークスタイル改革
IoBの発展によって訪れる未来像
実現に向けての課題とは?
掲載日:2025/08/12

イーロン・マスク氏が、自ら率いる医療系企業において、人間の脳にデバイスを埋め込む臨床試験を実施していると発表して話題を呼んだ。同実験は、IoB技術の非常に高度な活用例である。今回はIoBの概要を紹介するとともに実現に向けた課題も併せて解説する。
IoBの特長とIoTとの違い
IoBとは、身体や行動がインターネットとつながる技術のことを指し、同技術は「Internet of Bodies(身体のインターネット化)」と「Internet of Behavior(行動のインターネット化)」の二種類の意味が存在する。
Internet of Bodies(身体のインターネット化)
Internet of Bodies(身体のインターネット化)は人体に装着したデバイスによって健康状態などを管理する技術を指す。
例えば、心臓ペースメーカーのような体内に埋め込むデバイスや、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスによる健康管理などが挙げられる。
Internet of Behavior(行動のインターネット化)
Internet of Behavior(行動のインターネット化)は、デバイスが得た行動データを生活に活用する技術のことを指し、ウェアラブルデバイスが取得した位置情報や運動情報といった行動を分析して活用する技術が挙げられる。顔認証システムが搭載された監視カメラなどは、その一例といえるだろう。
IoBとIoTとの違い
IoBに似た言葉に「IoT(モノのインターネット化)」が挙げられる。IoTがデバイスから周囲の情報を収集するのに対し、IoBはデバイスを使用するユーザーの情報を収集することに特化している点が大きな違いだ。
IoBのメリットと利用事例
IoBは「データ収集」「分析技術」「行動介入」という三要素により成り立っている。ウェアラブルデバイスなどから行動データを取得し、AI分析などによる行動パターンの抽出、分析を行い、個人や集団の行動の最適化につなげる。
このようなデータの活用により、従来の方法では対応が困難だった課題に新たな解決法を提案できる。例えば、コロナ禍においては人々の接触する機会を極力減らすことが望まれたが、IoBによって行動データを収集・分析することで、人流をセグメント化して一カ所にとどまらないような動線を導き出し、人の行動を妨げずに接触を避ける方法を生み出した事例がある。
では、今日のビジネスにおいてIoBはどのように活用されているのだろうか。先進的にIoBを取り入れている企業の事例を紹介しよう。
国内のとあるSaaS系企業は、長距離トラックのドライバーの健康情報をスマートウォッチで収集し、危険な兆候が現れた場合はリアルタイムに通知するシステムを提供している。異常が検知された際はドライバーと管理者の両方に通知アラートが届き、居眠りや体調不良による気絶などに起因した事故を未然に防ぐというものだ。
同サービスは既に多くの運送業界で利用されており、例えば関東地方のとある運送業者では、同サービスの導入により業務の安全性をより担保できるようになったと振り返っている。さらに同事業社によると、サービスの導入後は従業員が自主的に体調管理を意識するようになったという。これは、サービス内で測定される身体情報を日常的に従業員自身が目にする機会が増えたことで、体調面の課題を把握して健康管理のモチベーションを高めるという意識の変化が生じたためであるとのことだ。
IoBが普及していくうえでの課題
IoBを語るうえで不可欠なのがプライバシーやセキュリティの問題だ。個人の身体に関わる情報であれば、収集されたくないというユーザーも多く存在するだろう。また、データの漏えいが発生した場合、大きな被害が生じることは避けられない。
セキュリティの面に関しては複数の認証を組み合わせること、生体認証を利用することなど、ユーザーはより強固な対応を求めるようになると予測される。
IoBの普及により幅広いユーザーへのリーチを実現

IoBは生活に密着した利活用が可能であり、従来のITでは行き届かなかった課題の解決や新たな需要を満たす手段として大きな期待がかかっている。これは、従来のIT機器がその効果を発揮するために、ユーザーに技術的な成熟を求めるものも多かったためだ。
特に、子どもや高齢者といったユーザーにも、IoBによるデータの自動取得と自動分析が広がることで、より幅広い顧客へリーチできるチャンスが生まれる。
ベンダーとしてはこの点にも目をつけ、通信機器などの安全性を高められる提案をすることでユーザーの利便性能向上や不安解消に貢献していきたい。