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中小企業のAI活用が進まない?
その背景や対策を解説

掲載日:2025/04/22

中小企業のAI活用が進まない? その背景や対策を解説

ビジネス分野でAI活用が広がる一方、企業によって利用率の格差が顕著になっている。特に大企業と中小企業間での利用率の格差が大きな問題だ。そこで中小企業でAI活用が進まない背景やAI活用を進める方法を紹介する。

AIの活用状況

AIの活用例は役割と機能で大きく8つに分類できる。前提の役割として人間の作業を代行する「代行型」と人間の作業を保管する「拡張型」に分かれ、そこに識別系、予測系、会話系、実行系のそれぞれ4種類の活用例がある。また、生成AIは、「代行型」と「拡張型」の両方の機能を持つ9つ目の役割とも言えるだろう。

識別系は画像や音声などを認識し、工場での検品や予知保全、顔認識などに用いられる。予測系は異常の検知や需要予測などに利用される。会話系はチャットボットなどで使用される。実行系は自動運転やロボットの動作制御などに活用されている。

この8つのAIの活用事例は、場面や業種が限定されるため、企業の規模で活用率を測ることは困難だ。そのため近年、急速に活用が広がっている生成AIに絞って解説していく。

2024年10月に日経BP社が発行した「DXサーベイ2025-2027」のレポートによると、生成AIの活用状況は、企業規模が大きいほど割合が増える結果が出ている。

従業員5,000人以上の企業では「全社的に活用している」、「一部の組織で活用している」の割合は合わせて55.5%。一方で、従業員300人未満の企業では「全社的に活用している」、「一部の組織で活用している」を合計しても19.7%にとどまっている。

また2024年9月に帝国データバンク社が発表した「生成AIの活用に関する日本企業の最新トレンド分析」では、売り上げが多い企業ほど活用率が高いという結果が明らかになっている。

中小企業で生成AI活用が広がらない背景

前述の資料「生成AIの活用に関する日本企業の最新トレンド分析」では、中小企業でAI活用が広がらない背景についても紹介している。

生成AIを活用すべき業務が不明確

生成AIを活用している企業とそうでない企業の大きな差として、「生成AIを活用すべき業務が不明確」な点が挙げられている。また、生成AI活用時の懸念点や課題に関しては「システム導入にかかる資金不足」「AI運用の人材・ノウハウ不足」や「情報の正確性」、「トラブル時の責任所在など社内的なルール整備」が多く挙げられている。

ノウハウ不足や活用方法が分からないといったケースでは、何がどこまでできるのかが明確ではないことによる不安が大きいという可能性もある。まずは、試験的に導入し、試行する中で生成AIのメリットを知ることが最初の一歩になるのではないだろうか。

ルール策定が進んでいない

帝国データバンクの調査では、生成AIを利活用するガイドラインを「策定している」、「策定を検討している」と前向きな回答をしている企業ほど、生産性が高い傾向にあることも述べられている。ここでの生産性とは、一人当たりの売上高を生産性とした際に、総売上高から従業員数を割った数値と定義している。

中小企業が人手不足やノウハウ不足などからルール策定が進まない点は理解ができる。しかし、その人手不足やノウハウ不足が課題となっている企業こそ、生成AIの活用を検討すべきだ。

中小企業が生成AIの活用を進めるには

中小企業で生成AIを活用するにはまず経営課題の洗い出しから始め、業務効率化、売上向上など、何に重点を置くかで利用方法を決めるのが良いだろう。

業務効率化を目的とする場合は、メール文面や社外文書などの要約、翻訳などで活用できる。またプログラミング、コーディングや情報収集なども生成AIが得意とする作業だ。売上向上につなげたい場合は、商品・サービスのキャッチコピーの案出しや、売り上げ傾向の分析などにも利用可能だ。

生成AIはプロンプトの書き方によって、アウトプットされる内容も大きく変わる。そこに不安を覚えるかもしれないが、まずは活用することで適切なプロンプトを探っていきたい。

セキュリティなどを考えると、有料版の生成AIを使うほうが安心だが、まずは無料版で試してみて、自社の課題にどう生かせるのかを見極めるとよいだろう。

今後はさらに生成AIの性能や活用範囲は広がっていくと見られる。新しい技術も積極的にキャッチアップを行えるように、生成AIの利活用を勧めたい。

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